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理想の“父さん”

  • 執筆者の写真: うめこ
    うめこ
  • 2023年10月16日
  • 読了時間: 3分

1970年代後半からアメリカで放送が開始され、その後日本でも放送されていた「大草原の小さな家」というドラマをご存じだろうか。 原作はローラ・インガルス・ワイルダー作の同名の児童書だ。

このドラマが大好きだ。

物語は少女ローラが成長して、立派な母親になってからも続いていくが、正直ローラが大人になってからのストーリーはイマイチである。

しかしローラの子供時代を描いたシーズン5くらいまでは、とんでもない名作だ。 家族の愛に心打たれ、涙なしでは見られない。


ところで、このローラの父親というのが、マイケル・ランドン演じるチャールズ・インガルスだ。

村でもめ事が起こったとき、強盗が入ったとき……いつだって物事を解決してくれるのはチャールズであり、村1番の人格者だ。

それもそのはず、このマイケル・ランドン、番組の総指揮者であり監督でもあるのだ。全話ではないだろうが、脚本も担当していたように思う。 そりゃ自分を活躍させちゃうよね~。


ほかのキャストに「めちゃくちゃイヤなやつだった」とか「現場の若い子と不倫してた」とか、いろいろ暴露されている彼ですが、ドラマのなかでは最高の父さんなんですな。

誰が何て言おうと、私にとっては理想の父親像そのものだ。


少しだけ自分の話をさせてもらうけど、小学2年のころに両親が離婚して、母、兄、姉、私の4人で母方の祖父母の家へ転がり込んだ。これが狭い団地で、荒れに荒れ狂っていた姉は1人で四畳半の部屋に引きこもり(おとなになってから話したところ、どうやら姉も好きでひとりぼっちになっていたわけではないらしい。みんながみんな、少しずつおかしくなっていて、壊れていたのだろう)、母、兄、私が六畳間、祖父母が居間で生活していた。

急に狭くなった家に祖母はイライラしつづけていたし、離婚のストレスやら不安やらで母も怒りっぽくなっていた。兄は学校から帰ると、頭から毛布をかぶって毎日のように部屋で泣いていた。明るくて人気者だった兄と姉は、すっかり心を閉ざしてしまった。

私には、居場所がなかった。放課後は友達と遊んでいたが、時間には限りがある。帰宅後から母が帰るまで、居間のすみっこで祖父母の視界に入らないように小さくなっていた。 兄が泣いているので、なんとなく同じ部屋にいてはいけないと思ったのだ。姉の部屋には、怖くて近寄れなかった。


そのときに、祖父が毎日のように見ていたのが「大草原の小さな家」だった。当時、NHKで放送されていたのを楽しみに見ていたようだ。 美人で優しい母さん、なかよしの姉、そしてなにより、絶対的な安心感を与えてくれる父さんがいるローラがうらやましくてたまらなかった。


ローラの家も、うちと同じくらい狭いのに、みんな幸せそうで暖かそうだった。

家族のことを心から愛していて、いつも味方でいてくれる父さん。何かあれば、涙を流しながら家族を守ろうと奮闘する父さん。

あんな父さんがいたら、自分の人生はどんなだっただろう。

居間のすみっこで、そんな空想ばかりしていた。

自分のパパが、父さんみたいになって迎えに来てくれるのを空想していた。

もちろんあれは作り物の世界で、実際のローラは原作やドラマみたいに素直でかわいい子ではなかったとか言われているし、きっと父さんだって1000%脚色されているだろう。フィクションなのだから。


わかってる。だけど、いまでも「大草原の小さな家」を見ると、眉尻を下げて優しく笑う父さんの存在がうらやましくてどうしようもなくなる。

たとえ中の人がどうしようもないやつだったとしても。

ドラマ「大草原の小さな家」のチャールズ・インガルスは、永遠に理想の父さんなのだ。

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